3月となりました。ロシアのウクライナ侵攻から1年、第二次大戦後、国連を中心として成り立ってきた世界秩序を、番人であるべき理事国ロシアが破壊した、という意味で、それまでの常識や前提が大きく覆された1年であったと思います。プーチンのウクライナ侵攻には様々な理由、背景が語られていますが、ソビエト連邦が崩壊し、ウクライナは世界が認めた独立国家になっているという、自分にとっては都合の悪い現実を直視できず受け入れられなかったことが根底にあるのではないでしょうか。
軍人、民間人問わず、今なお多くの尊い命が犠牲になっている戦争に例えるのは不謹慎かもしれませんが、リーダーが都合の悪い現実を直視しないが故に現場に多くの犠牲が生じる、という構図は、我々が日常仕事をしているなかでも多々目にする光景です。業務やシステムは現場、現実の積み重ね。足元で起きている事実(as-is)が全てのスタートラインですが、そこを真摯に見ないままに将来の夢(to-be)を語るリーダーがあまりにも多い。もちろん、将来の夢を語ることはリーダーの重要な仕事。将来の夢に向かって、会社の目指す方向が決まり、役職員の気持ちが一つに纏まっていきます。一方で、足元の組織には冷静に見極めなければいけない課題や力の限界が厳然としてあることも事実。リーダーが目指す将来の夢も、一つ間違えれば単なる個人の妄想となり、組織は簡単に崩壊してしまいます。
時間と費用が掛かるITプロジェクトは、完遂できてこそ意味があります。経営者であれ、プロジェクトマネージャーであれ、組織を動かす立場の人間は、将来の夢を熱く語る心とともに、都合の悪いことも含め足元の現実を見つめる冷静な心の双方が備わっていることが、目的を完遂するために最も重要な資質なのではないか、と思うのです。
廣瀬