~桃李成蹊~ 還暦オヤジの独り言

column

2023.08.01   ~桃李成蹊~ 還暦オヤジの独り言

8月を迎えて~「担雪埋井」 愚直に続ける~

8月となりました。連日「命の危険を感じる暑さ」が続き、心身ともに疲れが出てくる頃ではないでしょうか。体力が落ちると、集中力や抵抗力も下がり、思わぬ形で怪我をしたり持病が悪化したりしますので、皆さまも無理をせず、ご自愛ください。

7月は、8月1日の期限が近づくにつれて大谷選手のトレード報道が過熱しました。大リーグの公式ホームページで専用コーナーまで設けられたといいますから、現地の熱狂ぶりが想像できます。そうしたなかでも、本人は「(トレードは)自分でコントロールできることではない。自分でコントロールできること(グラウンドでのプレー)に集中するのみ」と至って平静。大谷選手のこうした野球に対する真摯な姿勢に一層世界中が魅了されるのだと思います。

大谷選手の言動を見ていて、「 担雪埋井(たんせつまいせい)」という禅の言葉を思い出しました。雪を担いで井戸を埋めようとしても、雪は水に溶けてしまって井戸は埋まりません。 無駄なこと、愚かな行為、から転じて、何かを為そうと努力をしてもそう簡単に事は運ばない、人生とは思うようにいくことばかりではない、という戒めを表しています。更には、雪で井戸を埋めることはできなくても、運び続ける努力が大切、ひたむきに続けることでその先に光が見えてくる、という教え、とも言われています。あれだけの成績を残している選手が、「自分でコントロールできないこと」に惑わされることなく、日々のひとつひとつのプレーを大切にすることが全て、と打ち込む姿には、こうした禅の教えにも通じる高潔さすら感じます。

ビジネスをしていても、「自分でコントロールできないリスク」に遭遇することがあります。その状況に惑わされずにどこまで真摯に仕事に向き合えるか、でリーダーの器、組織の度量が決まって来るのだと思います。同時に、そうした局面でこそ周囲との本当の関係や相手の信頼度が見えて来ます。IT化、情報化が進む中で「自分でコントロールできないリスク」は飛躍的に増えています。その一方で、IT化、情報化が進めば進むほど、最後は人間の愚直な努力に優るものはない、と考えてしまうのは、昭和のオジサンの発想なのでしょうか。

社会に出て40年、私が新人だった頃の電話メモやワープロは、スマホやパソコンとなり、当時は存在もしていなかったデバイスを通じて時々刻々と情報が入ってくる時代になりました。巷に溢れる玉石混交の情報はコントロールできません。だからこそ、事実や本質を見極める力と、どのような局面でもブレない姿勢が大事になってくるのではないかと思うのです。大谷選手のトレード報道も、都合の良い解釈や根拠のない憶測、中には悪意ある嘘までが入り乱れているのでしょう。そうした情報に惑わされることなく、愚直なまでに日々の仕事に打ち込む若者に、還暦過ぎたオジサンはただただ敬服するばかりです。

 

廣瀬

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