~桃李成蹊~ 還暦オヤジの独り言

column

2023.10.01   ~桃李成蹊~ 還暦オヤジの独り言

10月を迎えて~「魚は頭から腐る」 腐るのは頭だけではない~

10月となりました。9月はビッグモーター社の保険金不正請求に端を発した損保ジャパンの会見、ジャニーズ事務所の会見など、大手企業の社長辞任の記者会見が相次ぎました。ビッグモーター社を含め一連の事態に共通しているのは、「社長の辞任」だけでは受け止める側は納得していない、ということ。当然、問題を起こした組織の長である社長の責任は免れませんが、それで全てが解決する訳ではありません。各社とも幅広い活動を行ってきた企業。社外取締役を登用するなどして健全なガバナンス体制が取られていたのではないのか、内外監査等を通じて十分なモニタリング体制が取られていたのではないのか、契約や取引に際しては厳しいコンプライアンスチェックが掛けられていたのではないのか、等々。「個人の判断ミス」「権力者の鶴の一声」などと言えば言うほど、これまで多くのステークホルダーから頂いてきた信頼を裏切っていることに他なりません。

「魚は頭から腐る」というヨーロッパの古い諺があります。魚は目を見れば新鮮さが分かると言われ、腐る時も頭から腐っていきます。国家や政治のリーダー、上流階層が堕落・退廃し、社会が崩壊へと向かって行くことを揶揄している言葉と言われています。転じて、会社組織も社長やリーダーがお客様や社員のことを考えず、肩書や役職などの社会的地位、秘書や個室といった個人の既得権、強大な権限や目先の業績などに固執した時に、組織の腐敗が始まります。「魚は頭から腐る」と言っても、頭だけが腐る訳ではありません。時間の経過とともに、組織風土の浸透とともに、腐敗は組織の中へと広がっていきます。問題が発生した組織は、そこまで踏み込んだ現状把握と抜本的な施策を講じなければ、いずれまた同じことが繰り返されると誰もが分かっているからこそ、「社長の辞任」だけでは納得されないのでしょう。

問題を起こしてしまった組織はどうすれば良いのでしょうか。今回ジャニーズ事務所に対して「外部専門家による再発防止特別チーム」が言及した「解体的出直し」という提言が印象的でした。危機に直面したとき、多くの組織は自己防衛に走ります。自己防衛は当事者が考えている以上に周囲に見透かされており、「社長の辞任」もそれだけでは組織の防衛行為にしか見えず、結果的に更に組織を窮地に追い込んでいくことになり兼ねません。むしろ、平時であっても「解体的出直し」することを恐れず、積極的に自己変革できる組織こそが、どのような環境変化にも適応できる強く逞しい組織なのではないか、と思うのです。

 

廣瀬

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