11月となりました。「命の危険を感じる暑さ」が続いた日々から、一気に秋、冬へと空気が入れ替わった気がします。まだまだ寒暖の差も大きく、体調を崩しがちです。私も寒暖の差が体に堪える歳になりました。皆さまも無理せずご自愛ください。
11月の掛軸などで良く見られる言葉に「楓葉は霜を経て紅なり」(ふうようは しもをへて くれないなり)という禅語があります。この時期になると多くの人が紅葉を愛で、華やかに色づいた木々を見に出掛けます。私も先日新潟まで行き、色づいた美しい山々に囲まれて暫し寛ぎの時間を過ごして来ました。こうした紅葉の美しい紅は、毎年変わらずに色づいているようですが、それまでの天候により色づき方や時期は毎年変わります。特に、この言葉が言うように、厳しい霜を過ごしてきた紅葉は一段と鮮やかに色づくのだそうです。
転じて、人生にも辛く苦しい時は必ずあるが、そうした時期を経験し、耐え、乗り越えることで、人として大きく成長し、人生は輝きを増す、という教えをこの言葉は表しています。仕事では、競争の厳しい会社組織や事業活動の中で生き残ってきた、ある意味での成功者の方とのお付き合いすることが多くなりましたが、人として魅力を感じる方は、社会的な地位や肩書ではなく、むしろさまざまな苦労を経験し、乗り越えてきているように思えます。そうした苦労が、その方の年輪として、言葉や人柄に厚みと深みを与えているのでしょう。逆に、順風満帆に来た方は、思わぬ形で後年苦労している、というケースも目にします。
当社も小さなスタートアップとして開業して2年目、予想以上に順調に来ている面もあれば、開業時には想定もしていなかった苦労に見舞われている面もあります。そうした苦労も「この厳しい霜を過ごしてこそ、美しく色づく日を迎えることができるのだ」と泰然と受け止め、それもまた当社が更に輝くための貴重な経験として乗り越えていきたい、と思うのです。
廣瀬